日本で就労経験のある外国籍の方が台湾のビザ申請で職歴証明の認証を求められたら?

日本で就労経験のある外国籍の方が台湾のビザ申請で職歴証明書の認証を求められる場面のイメージ
目次

はじめに

日本で技能実習や特定技能として働いた経験のある外国籍の方が、台湾への留学や就労を目的としたビザを申請する際に、日本での職歴証明書の認証を求められるケースがあります。

「認証を取れと言われたけれど、どうすればいいかわからない」「会社はもう退職しているのに認証が取れるの?」という疑問を持つ方に向けて、実際に私が対応したケースをもとに、手続きの実態と解決策をお伝えします。

なお、本記事はプライバシー保護のため、依頼者および関係機関の個人情報は一切掲載しておりません。また、特定の機関を批判する意図はなく、あくまで手続き上の情報共有を目的としています。

なぜ台湾のビザ申請に職歴証明の認証が必要になるのか

台湾はハーグ条約に加盟していない

外国の公文書を簡単に認証する仕組みとして「アポスティーユ」があります。これはハーグ条約(外国公文書の認証を不要とする条約)に基づくもので、日本を含む多くの国が加盟しています。

しかし台湾はハーグ条約に加盟していないため、アポスティーユが使えません。その代わりに「領事認証」という手続きを経る必要があります。領事認証とは、その国の領事館が「この書類・署名は本物である」と確認する手続きです。

領事認証は書類の内容ではなく署名・印鑑の真正性を確認するもの

ここで重要な点があります。領事認証は書類の内容が真実かどうかを審査するものではありません。あくまで「この署名・印鑑は確かに本人のものである」という形式的な確認です。書類の真実性については、発行者が責任を負います。

日本での職歴証明書の認証がなぜ難しいのか

職歴証明書は私文書である

日本では、企業が発行する在職証明書・退職証明書は「私文書」として扱われます。私文書に認証を付けるためには、まず公証役場で公証人による認証を受ける必要があります。

公証人の認証には会社の出頭が必要

公証人が私文書に認証を与えるためには、署名・押印した会社代表者、または委任状を持った代理人が公証役場に出頭し、署名・押印の真正性を確認する手続きが必要です。

退職済みの場合、会社に法的義務はない

日本の労働基準法では、退職証明書の交付義務は退職時に労働者から請求があった場合に限られます。出身国によっては退職後も元従業員への証明書再発行義務が法律で明確に定められている場合がありますが、日本では退職後の元従業員からの再請求に応じる法的義務は明文化されていません。

つまり退職済みの会社に対して「公証役場に出頭してください」とお願いしても、会社側がそれに応じる義務はなく、実務上も非常に困難です。

日本には署名認証の文化が根付いていない

出身国によっては公証人(Notary Public)による署名認証が日常的に行われており、比較的簡単に手続きができる場合があります。しかし日本では印鑑文化が中心であり、公証役場での署名認証という手続き自体が一般の方にはほとんど馳染みがありません。

実際に試みたアプローチとその結果

アプローチ①:日本の実務状況についての説明書の提出

まず、日本における認証手続きの実情を丁寧に説明する書面を作成し、台湾の担当窓口にお伝えしました。具体的には、退職済みの元従業員のために会社が公証役場や領事館へ出向くことは日本の実務上あまり例がないこと、日本と出身国では元従業員への証明書発行に関する法制度が異なることなどをご説明し、本人が出身国内で宣誓供述書(Affidavit)を作成する形での代替が可能かどうかをおたずねしました。

しかし、認証取得の方針は変わりませんでした。

アプローチ②:行政書士による事実証明書類の作成

行政書士法第1条の2に基づき、行政書士が第三者として客観的な公的記録(在留カード・技能実習修了証書・パスポートの出入国記録・指定書等)および発行元企業への直接電話確認に基づいた「日本における在留および就労活動に関する事実証明書」を作成し、台湾領事館への領事認証を申請しました。

しかし台湾側からの回答は「領事認証は適切な機関が正式に発行した書類にのみ付与できる」というものでした。

アポスティーユであればこの種の書類でも対応できた可能性がありますが、台湾はハーグ条約非加盟国のため領事認証ルートとなり、発行主体の要件がより厳格に審査されました。

アプローチ③:各領事館への問い合わせ

複数の台湾領事館に問い合わせを行いました。その結果、職歴証明書の発行地が管轄外であることを理由に受付できないとの回答がありました。今回は添付書類の発行地がすべて関東地方であったため、東京の窓口への問い合わせを案内されました。

これはあくまで発行地に基づく管轄の問題であり、発行地が別の管轄であった場合に、行政書士が作成した事実証明書類の領事認証が認められたであろうことを意味するものではありません。

台湾外交部領事事務局(BOCA)への照会と公式回答

行政書士として作成した事実証明書が、内容を確認されることなく電話で拒否されたことに疑問を感じ、台湾外交部領事事務局(BOCA・日本の外務省領事局に相当)に対して、その理由についての見解を照会しました。

その結果、管轄する台北駐日経済文化代表処(TECRO・東京)の領事部から、詳細かつ明確な公式回答をいただくことができました。なお、いずれの窓口においても共通して示されたのが、書類の可否について事前審査は原則として行わないという点です。最終的な認証の可否は、実際に申請書類一式を提出した上で、領事による審査を経て初めて判断されます。

回答の要点は以下の通りです。

第三者が作成した証明書は認証の対象外

申請者の就労を証明するために第三者が作成した書類は受け付けない、との回答でした。つまり、行政書士など本人・発行企業以外の第三者が作成した職歴証明書は、領事認証の対象にならないことが明確に示されました。

職歴証明書の正しい認証ルート

台湾の在外公館が認証する職歴証明書は、以下のいずれかの形式である必要があります。

①本人による個人名義の認証

本人が書類を準備し、本人自身が公証役場に出頭して認証を受けた上で、領事認証を申請する(例:宣誓供述書〔Affidavit〕)。

②会社名義による商務認証(business authentication)

職歴証明書を発行した会社、またはその委任を受けた者が、領事認証を受けようとする管轄の都道府県にある公証役場で認証を受ける。その後、会社代表者または委任状を持った代理人が領事認証を申請する。

商務認証における補足:法人と個人事業主の違い

東京・大阪双方の台湾窓口に追加で確認したところ、商務認証において誰が公証役場に出頭できるかについて、重要な違いがあることがわかりました。

職歴証明書の発行元が法人である場合、公証役場での手続きは代表者本人でなくても、委任状を持った代理人(従業員等)が出頭することが可能です。これは東京・大阪いずれの管轄でも共通して確認できました。

一方、発行元が個人事業主である場合は、必ず事業主本人が公証役場に出頭する必要があり、代理人による出頭は認められません。

なお、認証手続きの詳細については、管轄する領事館によって裁量や運用が異なる場合があります。実際に手続きを進める際は、事前に管轄の窓口へお問い合わせいただくことをお勧めします。

在留・住所に関する証明について

  • 住民票(日本の役所が発行する公文書)→公証不要でそのまま認証可能
  • 在留カードのコピー→公証役場での認証後に領事認証が可能

結論:現実的な解決策

以上を踏まえると、退職済みの外国人が日本の職歴証明書を台湾のビザ申請のために認証する場合、現実的な選択肢は次の2つです。

Option A:会社名義での商務認証(会社の協力が必要)

会社の代表者、または委任状を持った代理人(発行元が法人の場合は従業員でも可)が:

  1. 領事認証を受けようとする管轄の都道府県にある公証役場で会社名義の認証を受ける
  2. 同じく発行地を管轄する台湾領事館で領事認証(商務認証)を受ける

会社の協力が得られる場合はこのルートが使えますが、退職済みの場合は会社の協力を得ること自体が難しいのが実情です。また、発行元が法人ではなく個人事業主の場合は、事業主本人が公証役場に出頭する必要があります。

Option B:本人による宣誓供述書(Affidavit)の作成(現実的)

  1. 本人が日本に来日する
  2. 職歴証明書の発行地(会社の所在地)を管轄する公証役場で宣誓供述書(Affidavit)を作成し、本人自身が公証人の前で宣誓する
  3. 公証人認証を受ける
  4. 同じく発行地を管轄する台湾領事館で領事認証を受ける

重要な点として、台湾の領事館から「代理人による公証人の面前での宣誓は認めない」という見解が示されています。つまり公証役場での宣誓の場面については代理人を立てることができず、本人が直接日本に来る必要があります。一方で、公証人認証を受けた後の領事認証の申請自体は、代理人が行うことも可能です。

なお、アポスティーユの場合は公証役場での手続きに代理人を使うことが可能です。しかし台湾はハーグ条約非加盟国のため、このルートは取れません。これが本人来日が必須となる背景です。

まとめ:同じ状況で困っている方へ

日本での就労後に台湾でのビザ申請を予定している方は、以下の点を事前に把握しておくことをお勧めします。

  • 台湾はハーグ条約非加盟のため、アポスティーユではなく領事認証が必要
  • 第三者が作成した職歴証明書は領事認証の対象にならない
  • 退職済みの場合、会社側への認証協力依頼は法的義務がなく困難
  • 本人による宣誓供述書(Affidavit)は現実的な選択肢だが、本人が職歴証明書の発行地を管轄する公証役場に出頭して直接宣誓する必要がある。その後の領事認証申請のみ代理人が可能
  • 公証役場・台湾領事館ともに、職歴証明書の発行地(会社の所在地)によって管轄が決まる
  • 認証手続きの詳細は管轄する領事館によって裁量や運用が異なる場合があるため、事前の問い合わせをお勧めする

なお、本記事の内容は主に東京・大阪管轄の台湾窓口への確認に基づくものです。

こんな方はお早めにご相談ください

母国へ帰国された後、ハーグ条約に加盟していない国へビザを取得して渡航する予定があり、必要書類の中に在職証明書への領事認証が求められる場合は、日本に在職中、渡航前の段階で当該書類の領事認証を受けておくことを強くお勧めします。帰国後に手続きを行うと、本人が再来日しなければならないなど、大きな負担が生じる可能性があります。

なお、職歴証明書が九州管内で発行されたものである場合は、公証役場・領事館での手続きに直接同行するなどの対応が可能です。そのような方は、ぜひ一度ご連絡ください。

また、これはアポスティーユの話になりますが、帰国後に在職証明書へのアポスティーユが必要になった場合や、会社が職歴証明書を発行してくれないといった場合も、ぜひ一度ご相談ください。状況に応じた対応をご提案いたします。

台湾の領事認証・アポスティーユ手続きは行政書士事務所きりんへご相談ください

公証役場や領事館とのやり取り、宣誓供述書(Affidavit)の作成など、実際の対応経験に基づいたサポートが可能です。九州管内で発行された職歴証明書であれば、手続きへの同行にも対応いたします。

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この記事を書いた人

本ブログ「きりんの指南」にご訪問いただき、誠にありがとうございます。行政書士事務所きりん代表の大塚竜一です。

当ブログでは、元自衛官としての正確性と登録支援機関での豊富な現場経験を活かし、複雑な国際業務(ビザ・アポスティーユ)や風営法、その他各種許認可に関する確実な知識と解決策を指南いたします。

複雑で分かりにくい手続きは、どうぞ行政書士事務所きりんにお任せください。

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